2026-09-28
【開催レポート】新シリーズ第1回:AIに任せる仕事、人にしかできないこと〜業務の再設計〜

2026年9月17日(木)、アンドドット株式会社、GMO即レスAI(GMOペパボ株式会社)の共催で、新シリーズ第1回セミナー「AIに任せる仕事、人にしかできないこと〜業務の再設計〜」をオンラインで開催しました。
前シリーズ「失敗しないAI活用」全4回に続く新シリーズの初回で、テーマは「業務の再設計」です。アンドドットの小森氏がAIを使いこなす人の運用方法を、GMO即レスAIの下之角がAIと人の分業を、それぞれお話ししました。本レポートでは、セッションの内容と質疑応答のポイントをご紹介します。
開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| セミナー名 | 【新シリーズ第1回】AIに任せる仕事、人にしかできないこと〜業務の再設計〜 |
| 日時 | 2026年9月17日(木)16:30〜17:30 |
| 開催形式 | オンライン(Zoom Webinar) |
| 参加費 | 無料 |
| 主催 | GMOペパボ株式会社 |
| 共催 | アンドドット株式会社、GMO即レスAI(GMOペパボ株式会社) |
| 登壇者 | 小森 一輝(アンドドット株式会社 AIスペシャリスト)、下之角 怜(GMO即レスAI 即レスAIチーム) |
登壇者紹介

小森 一輝 氏
アンドドット株式会社 AIスペシャリスト / まほろば創研株式会社 代表取締役
日本マイクロソフトを経て、2024年よりアンドドットでAI導入・普及支援を担当。

下之角 怜
GMOペパボ株式会社 事業開発部 即レスAIチーム ディレクター
カスタマーサービス業界で10年以上従事した後、現在はGMO即レスAIのディレクター。
セッション1:AIを使いこなせている人は、どう運用しているのか
AIに任せるのは「発散」、人がやるのは「収束」

小森氏がまず示したのは、シンプルな境界線です。AIに任せるのは「広げる・作る」発散の側——アイデアを出す、調べる、叩き台をつくる部分。人がやるのは「絞る・決める」収束の側です。AIは組織の暗黙知や社内ルールまでは把握しきれないため、最終決定は人が担います。
「AIに『私の業務に合うアイデアを1つ見つけて』と頼むのではありません。10パターン考えさせて、自分に合うものを1つ選びに行くイメージです」と小森氏。もう一つ人が担うのは「伝えることを決める」工程です。Webサイトなら、見た人がどんな気持ちになりどんな成果につながるといいのかまで指示に含める。この温度感は人が言葉にする必要があるといいます。
後戻りできない操作は、人が引き取る
3つ目に人が担う領域が、取り消せない操作です。削除系の処理や本番データベースへの変更はなるべく人がやり、AIに実行させる場合でも可否の確認は人が行うべきだとしました。
実際、AIがプログラムを書くツールの現場では、2025年に複数の事故が報告されています。あるツールでは変更停止を指示していた期間にAIが本番データベースを削除し、別のツールではキャッシュを消すはずがドライブ全体を削除しました。「指示で禁止していても、AIが操作できる状態だと事故は起きる」——対策は、実行禁止コマンドの登録、AI専用の作業環境(サンドボックス)、承認モードの使い分けです。
「AIっぽさ」の原因は使う人の差。だから指示を共通化する
AIで作った資料が「いかにもAIっぽい」——原因は、人によって使い方が違うことです。うまく指示が出せるAさんは綺麗な成果物をつくれるのに、慣れていないBさんは同じツールでもAIっぽい出力になってしまう。
解決策は「共通化」です。指示文をテンプレート化すれば、Aさんのクオリティで全員が仕事をできます。その形が、AIツールの「スキル」機能。手順とルール、ブランドの配色、スクリプト、ロゴやひな形をまとめて渡すと、誰が指示を出しても成果物が安定します。同様の共通化はChatGPTのGPTsやGeminiのGemでも実現できます。
自治体や大手企業のように、住み分けをルールブック化する組織も増えているとのことです。
余白は「まとまった時間」ではなく「待ち時間の隙間」に生まれる
企業の公表値としては、ある大手企業が2025年度に年間総労働時間の3.4%に当たる78.8万時間を削減したなど、数字が並びます。ただ小森氏が指摘したのは、その時間の使い道が意外とぼやっとしたままだということ。
自身も提案資料を順番に作っていたのが同時に進められるようになった一方、1件あたりの時間は変わらないといいます。「まとまった空き時間はそんなに多くありません。AIに指示を出して待っている間の隙間を別の作業に割り当てる、という進め方が多いですね」
セッション2:AIとの分業と、人に残る仕事
後半の冒頭は、参加者への問いかけから始まりました。「今、AIにある程度任せた仕事をされていますか?」——ここでの「任せる」は、役割を決めて自律的に実行させることです。チャットには使用中の言語モデルとあわせて回答が寄せられ、すでに任せている方から「まだこれから」という方まで、現在地にグラデーションがあることが共有されました。
10年変わらなかった課題は、回答の質ではなく「待ち時間」
下之角がカスタマーサービスに携わった10年間、課題はほぼ同じでした。不満で最も多いのは「返信が遅い」「待ち時間が長い」です。「どんなに正確に答えても、お待たせしている時点で評価の対象外になってしまいます」。つらいのは対応の品質ではなく、解決できていない時間そのもの。
待たされた不満は、多くの場合そのまま離脱につながります。自社の数値でも、問い合わせの62%はマニュアルで回答できる定型的なものでした。「書いてあるのにたどり着けていないことが問題でした」
AIがしたのは、待ち時間そのものを消すこと
従来は困りごと→フォーム記入→順番待ち→有人回答という流れで、待ち時間が翌営業日まで伸びていました。現在はAIがその場で解決し、解決しなければ文脈を引き継いで有人につなぐ。「やったことは、回答の質を上げたことではなく、待ち時間そのものを消したことです」。任せられる範囲は、よくある質問への24時間の即レス、マニュアルから根拠を探す検索と要約、過去の対応や契約情報を踏まえた返信文の下書きの3つです。

GMOペパボの実績は、有人対応の削減率が30%以上、削減した対応時間が1,620時間、顧客満足度が86%から88%へ2ポイント上昇(主要7サービス/2024年1〜5月)。「満足度は下がらず、むしろ上がりました。早く回答が返ってくること自体が高品質だという裏付けだと思っています」

海外事例:やめられたのは「全部AIに任せる」という設計
スウェーデンの決済会社は2024年にAIエージェントを全世界に公開し、初月に230万件の会話を処理、問い合わせの3分の2をAIだけで完結させました。解決時間は11分から2分未満、フルタイム700人分に相当します(2024年2月の同社公式発表)。
ところが翌年、同社は有人窓口を戻します。コスト削減に寄りすぎて品質が落ちた、というのが経営側の振り返りだと紹介されました(2025年5月のCEOインタビュー報道)。ステータス確認には効果的だった一方、複雑・感情的な相談で失敗が重なった。支払いが滞って生活に困っている方に、規約を機械的に返してしまうようなケースです。「やめたのは、全部AIに任せるという設計のほうだったんだな、と」
対照的に伸びたのが、英国の電力会社です。お客様へのメールのおよそ35%をAIが下書きし、人が最後にトーンと文脈を見て送る。AIの下書きのほうが満足度は高く70%で、約3分の1は修正なしで送られているそうです(業界団体techUKの公開ケーススタディ)。「国も業種も違う企業が同じ設計にたどり着いています。AIが下書きを書いて人が確認して出す。成果が出ている企業はこの形なのかなと」
デモ:AIが24時間巡回して検知し、人が判定する
続いてデモです。パンのECサイトで、検証用に「本州は1,200円」という誤情報をナレッジに記憶させています。ハルシネーションの分析機能を開くと、AIが24時間、求めた要件どおりに巡回・検査した結果が並びます。「これは人には無理なんですよね」と下之角。オペレーターの対応を8時間聞くことも、全回答を読み返すこともできなかったといいます。最上段には「事実と違います」のラベルと「本州は880円です」という修正提案。原因のナレッジを開くと修正前後が差分表示され、「提案を反映」を押せば更新は完了します。

AIは改善案を出し、人が判定してGOを出す。「最後にGOを出すのは、人。責任を持つのが人の仕事」です。AIの出力を右から左に流すだけにしてしまう状態は「ミート・プロキシ」と呼ばれ、AIの回答が「会社の回答」として責任を問われた事例(Moffatt v. Air Canada, 2024 BCCRT 149)も示されました。「経験から来る直感で『いや、これは違うな』と思う勘どころがあります」。そうした判断基準は現場にいた人しか言語化できない、と述べました。
余白ができたチームは、部署の外に出ていた
人は何をするようになったのか。実例は4つ。導入企業へ取材に行きお客様の言葉を記事にすること、Web検索や生成AIから紹介されるようコンテンツを公開すること、セミナーで直接会う機会をつくること、セールスの現場に出ることです。「この4つはカスタマーサービスの業務範囲ではないんですよね。気づいたら部署の外にいたな、と」
前準備として、①待ち時間が長い業務を探す②影響範囲が狭い業務から任せる③担当と頻度を決めて出力を評価する、の3ステップも示されました。

「言語モデルがいくら新しくなろうが、AIの賢さには依存しないと思っています。出力を見て『これはいい』『これはダメ』と判断する基準を、どれだけ言語化できたか」と下之角は締めくくりました。
質疑応答
今回は登壇者同士のクロストークとなりました。
Q.(下之角から小森氏へ)「ミート・プロキシ」にならないよう、AIから出てきたものをどう判定して自分の名前で出しているのでしょうか?
小森氏:まず、AIが出した内容を自分の言葉で説明できるかどうかが前提だと思っています。チェックは2種類あって、ルールで見られるもの(普段使わない表現になっていないか)と、自分の伝えたい意志どおりに資料ができているか。人間の目が必要なのは後者で、前者は仕組み化しています。
下之角:苦労しているのはデザイン系です。スライドの配置や図解の挿入は思い通りになりません。社内のうまいスライドを読み込ませて壁打ちしています。
小森氏:一から十まで一回の指示でやらせないのがポイントです。一回で全部やらせるから全部60点になってしまう。能力が増強されているようで、実は薄く伸ばされているだけ、という感じもあります。
まとめ
- AIに任せるのは「発散」、人がやるのは「収束」。後戻りできない操作は人が引き取る
- 「AIっぽさ」は使う人の差。指示をスキルとして共通化すれば出力が安定する
- AIがしたのは、回答の質を上げたことではなく、待ち時間そのものを消したこと
- 任せられる量は、モデルの賢さではなく判断基準の言語化の量と質で決まる
次回のご案内
次回・第2回は2026年10月27日(火)16:30から開催予定です。前シリーズ「失敗しないAI活用」のレポート(第1回・第2回・第3回・第4回)もあわせてご覧ください。
お問い合わせ
アンドドット株式会社(AI導入支援・研修)
コーポレートサイト:https://and-dot.co.jp/
お問い合わせ:https://and-dot.co.jp/contact
GMO即レスAI(AIチャットボット導入・運用。導入から運用・定着までの伴走支援、AI研修もご提供しています)
サービスサイト:https://sokuresu.ai/
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