2026-07-10
【開催レポート】第4回:失敗しないAI活用〜実践事例と発展編〜

2026年7月9日(木)、アンドドット株式会社、GMO即レスAI(GMOペパボ株式会社)の共催で、「失敗しないAI活用」シリーズ第4回セミナー「実践事例と発展編」をオンライン(Zoom Webinar)で開催しました。
第1回(業務課題の整理)・第2回(導入期の指標)・第3回(運用と定着)と積み上げてきた全4回シリーズの最終回となる今回のテーマは、「実際に成果を出した事例」と「その先の発展的な活用」です。GMO即レスAIの下之角が導入企業の業種別事例とAIエージェント連携の最前線を、アンドドットの小森氏が個人と組織が次のステップへ進むための具体的な道具立てを、それぞれの視点からお話ししました。本レポートでは、セッションの内容と質疑応答のポイントをご紹介します。
開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| セミナー名 | 第4回:失敗しないAI活用〜実践事例と発展編〜 |
| 日時 | 2026年7月9日(木)17:00〜18:00 |
| 開催形式 | オンライン(Zoom Webinar) |
| 主催 | GMOペパボ株式会社 |
| 共催 | アンドドット株式会社、GMO即レスAI |
登壇者紹介

下之角 怜
GMOペパボ株式会社 事業開発部 即レスAIチーム ディレクター
鹿児島県出身。東京での12年間の生活を経てUターン。カスタマーサービス業界で10年以上お客様対応に従事した後、現在はGMO即レスAIのディレクターとして、AIプロダクトのディレクションとWebマーケティングを担当している。

小森 一輝 氏
アンドドット株式会社 AIスペシャリスト / まほろば創研株式会社 代表取締役
2023年に日本マイクロソフトに入社し、Azureや生成AIの導入支援に従事。2024年よりアンドドット株式会社でAI導入・普及支援を担当し、2025年2月には「まほろば創研株式会社」を設立して代表取締役に就任。企業向けのAI活用支援を幅広く手がけている。
セッション1:AIの効果を「点」から「線・面」へ〜業種別の実践事例と発展編〜

前半は、GMO即レスAIの下之角より、GMO即レスAIを導入した企業が実際にどんな成果を出したのかという事例と、GMOペパボ自身のAIエージェント活用・全社展開についてお話ししました。
「あなたの会社のAI活用は、どの屋台メニュー?」
夏祭りシーズンにちなんで、冒頭は屋台メニューになぞらえた問いかけから始まりました。「あなたの会社・組織のAI活用は、事業の数字に直結した手応えがありますか?」——導入前で冷たい期待があるだけなら「かき氷」、計測しておらずふわふわした成果にとどまるなら「わたあめ」、香ばしい手応えを感じ始めているなら「焼きとうもろこし」、数字があって確かな旨味を感じているなら「たこ焼き」。

チャットには「わたあめです」「かき氷です」といった率直な回答が寄せられ、多くの組織がまだ「数字で語れる手前」にいる現在地が共有されました。下之角は「AI活用も屋台選びと同じで、どのツールを選ぶかよりも、ちゃんと旨味(成果)を出せるかが重要」と述べ、活用を計測して事業を動かす数字につなげる方法を一緒に考えたい、と本題に入りました。
業種別の実践事例:成果は「AIが効く業務」から始まる
GMO即レスAIは、AIチャットボット、ナレッジ管理、問い合わせ分析、有人チャットまで含むAIカスタマーサポートサービスの総称です。導入企業の事例が4つ紹介されました。

事例1:スタートアップ支援施設 — 導入1ヶ月で電話対応を8割削減
施設利用に関するシンプルな電話問い合わせが他の業務を圧迫していたところ、チャットボット導入からわずか1ヶ月で電話対応を8割削減。「電話の前にまずチャットボットに聞く」流れができたことで、1件あたりの通話時間も短くなったといいます。興味深いのは、問い合わせの総数自体はむしろ増えたこと。24時間いつでも心理的ハードルなく聞ける動線ができ、これまで表に出てこなかった潜在ニーズを拾えるようになりました。実は導入前、過去に別のチャットボットで良くない評判があった経緯からスタッフは効果に懐疑的だったそうですが、1ヶ月で「ちゃんと効果が出ている」という実感に変わり、現在は会話ログをダッシュボードで分析し、利用者ニーズに先回りした情報提供へと運用が進化しています。
事例2:物流テック — 別のAIで改善サイクルを効率化、サイレントカスタマーも可視化
運用の回し方がお手本になる例です。担当者が週次でAIチャットボットの回答内容をチェックして精度改善サイクルを回し続けていますが、全件を見切るのは難しいため、別のLLM(AI)を使って改善効果の高い項目だけに絞り込むという工夫をしています。AIチャットボットの出力を別のAIで効率化するという、まさに掛け合わせの発展形です。AI推進・カスタマーサービス・開発の3チーム連携により、エンジニアだけでは気づけない問題をCSの視点で補う体制も構築。その結果、問い合わせせずに離脱してしまう「サイレントカスタマー」を可視化できたことも大きな成果でした。
事例3:HR・人材サービス — 問い合わせ1.3倍を増員ゼロで吸収
単発のお仕事をマッチングするプラットフォームで、事業成長に伴い繁忙期の問い合わせが約7,500件から10,000件へと1.3倍に増加。従来なら増員を検討する場面ですが、増員ゼロのまま繁忙期を乗り切りました。ポイントは運用面です。担当者がダッシュボードで日次の数値を見ながらプロンプトを調整し、複雑な相談にはタグを付けて有人対応につなぐなど、AIと人の役割分担を明確化。成果を経営側へ伝える際も「月間80時間の削減」と伝わる数値に置き換えて浸透させました。現場のオペレーターは「時間をかけて丁寧に対応すべき案件だけに集中できる環境になった」と話しているそうです。
事例4:製造業の新規事業 — 2ヶ月で会員53名増、たった1人の運用で
事業の数字に直結したという点で「今日一番特別な例かもしれない」と紹介されたのが、製造業の新規事業でのAIチャットボット活用です。ニッチな業界で利用にそれなりの費用がかかるサービスながら、AIチャットボットが月300件を超えるペースで使われ、2ヶ月で会員が53名増加しました。しかも運用しているのは、エンジニアでもマーケターでもない、町工場のお母さんのような方がほぼ1人で。「有人窓口では聞きづらいことでもAIには気軽に聞ける」という人の心理をうまく生かし、会員になる手前のちょっとした不安や疑問をAIが受け止めています。会話ログからニーズを把握して次のサービス作りに生かすなど、効率化を超えて新しい事業作りの入り口になっている例です。カスタマーサービス出身の下之角は「私はここに一番可能性を感じている」と述べました。
成果が出る組織の共通点は「運用の設計」
4つの事例から見えてくる共通点も整理されました。つまずきがちな企業は、AI活用がガバナンスの効かない状態で放置されている、個人の判断任せで組織的に用いられない、入れただけで更新が止まっている、効果が現場の実感止まり——といったパターンに陥りがちです。一方、成果が出る組織は、AIを業務フローに組み込み、ログを資産として残して改善サイクルを回し、経営側が納得しやすい言葉・数値に翻訳して伝えています。「差はツールの優劣ではなく、運用の設計にある」というのが前半のキーメッセージです。

発展編①:会話ログは会社の資産になる

ここからは「その先」の話です。発展の1つ目は会話ログの資産化。AIに集まる問い合わせログは会社にとって大きな資産になり得ます。ある写真関連サービスの企業は問い合わせ履歴からFAQのわかりにくさを発見してナレッジを育て、スキルマーケットの企業は相談の質の変化を捉え、先ほどの製造業は次の構想作りに活用しています。カスタマーサービスの文脈では「VOC(お客様の声)」の資産化は昔からありますが、VOCが人の集めた情報であるのに対し、AIが集める情報は毛色が違い、従来とは違う文脈・要望が集まりやすいのが特徴です。問い合わせ削減という直接の効果だけでなく、分析と工夫を重ねることで、カスタマーサービスがマーケティングや商品開発の入り口につながっていきます。
発展編②:AIエージェント連携と「作る側」に回る現場

発展の2つ目は、GMOペパボ自身のAIエージェント活用事例です。
- AIと有人の連携 — 以前はAIチャットボットが答えられないとき、お客様が同じ内容を有人チャンネルに入力し直す手間がありました。現在は「GMO即レスAI for CS」により、AIから直接有人チャットへつながり問い合わせ内容もそのまま連携される、二度手間ゼロの状態になっています。
- AIと業務システムの連携 — 問い合わせメールに対し、AIエージェントが返信ドラフトを自動作成し、内容を分類して「そのまま送ってよいか」の信頼度まで判定。人は文章を確認して送るだけです。一般的なメールのAI補助と違うのは、契約情報や取引先との過去のやり取りといったコンテキストを踏まえた文章を自動で書いてくれる点です。
- 現場が「作る側」に回り始めた — エンジニアではないCS担当者などが、Claude CodeのようなAIエージェントを使って自分たちで業務ツールを作るようになりました。GMOペパボ社内ではすでに30件以上のAI自動化の仕組みが稼働——というより、GMOインターネットグループでは「1人10体のAIエージェントを自作する」動きが進んでおり、従業員約400人のGMOペパボで4,000体、グループ全体8,000人なら8万体という計算になります。「まだそこまでは揃っていないが、いずれ到達する」と下之角は見立てを語りました。
GMO即レスAIはもともと、GMOペパボが自社の全サービスのカスタマーサービスをAI化するプロジェクトから生まれたサービスです。2023年に全サービスへAI機能を導入し、2024年には全問い合わせ対応をAI化。そのノウハウを事業化しました。現在は各部署に「AI大臣」という推進リーダーを置き、活用事例の共有が日々盛んに行われています。カスタマーサービスの一次対応という「点」から始まった取り組みが、部門をまたぐ「線」になり、AIが組織の文化という「面」まで広がってきた——これが前半のまとめです。
最後は冒頭の屋台メニューに戻り、「かき氷のような導入前の冷たい期待を、数字で語れる成果——熱々のたこ焼きの熱で溶かしていきたい」と締めくくりました。
セッション2:生成AI組織活用における「次の一手」を知る
後半は、アンドドット株式会社 AIスペシャリストの小森氏より、前半の組織展開の話を受けて「では個人として、足元で何をやればいいのか」という手触り感のあるお話をいただきました。
AI活用人材が育つ3つのステップ(シリーズ総復習)
シリーズを通して毎回示されてきた、組織がAIを展開する3つのステップが改めて共有されました。

- AI基礎リテラシーの教育 — AIの得意・不得意やリスクを知ること。加えて意外と大事なのが「どこでAIが使えるか」という活用場面の発想の幅を広げること、そして品質のよい出力を得る指示(プロンプト)のコツをつかむこと
- 業務特化型AIツールの活用 — 汎用型(ChatGPT、Claudeなど)に対し、業務ごとに特化型ツールを使い分けたほうが精度は高くなる。モデル(AIの頭脳)ごとの特性を知り、「この業務ならこのツール」という判断軸を持つ段階
- 自発的なAIアプリの開発 — 既存ツールで届かない業務の隙間を、自分でAIツールを作って埋める段階
ステップ2の具体:ツールを選べると、これだけ変わる
業務特化型ツールの例として、PC操作を自動化するエージェント型ツール、情報検索に特化したNotebookLM、音楽生成のSunoなど、領域ごとに強みの異なるツールが紹介されました。ソフトウェア開発が多いアンドドットでは、開発者向けAIツール「Devin」を活用。Slackでメッセージを投げるとAIがプログラムの変更まで行って返してくれる仕組みで、月40時間かかっていた保守作業が、指示出しと中身のチェックだけの月4時間になったといいます。
もう1つの例が日報作成です。従来はプログラムの変更箇所を一つひとつ確認して箇条書きにまとめていた作業を、AIに自動で見に行かせて日報まで作らせるようにしたことで、人が手で書く必要がなくなりました。小森氏は「AIで時間的な余白を作り、その余白で余裕のあるコミュニケーションや新しいチャレンジに時間を使う。この『余白を作る』ことが非常に大事」と強調しました。
ステップ3の具体:プログラムを書かなくてもAIアプリは作れる
本題のステップ3では、AIアプリ開発には「AIにプログラムを書いてもらうパターン」と「ノーコード(Dify、n8n、Copilot Studioなど)でブロックをつなぐパターン」の2つがあると整理。社内に散らばる情報から必要な情報を瞬時に見つけ出すRAG(検索拡張生成)を使った社内事例検索なども、自作アプリで実現できます。

当日はノーコードツール「Dify」の画面を映しながらのデモも行われました。何を入力として受け取り、AIに何を考えさせ、どの外部ツールと連携して回答するか——プログラムを一行も書かず、箱を置いて線でつなぐだけでAIツールが完成します。実例として紹介されたのは次のようなアプリです。
- 経費精算の自動化 — 領収書の画像を送信すると、日付・品目・金額を自動で抜き出してスプレッドシートに登録(その場でライブ実演)
- テレビ取材判定アプリ — プレスリリースの文章を貼り付けると、取材を受けられる可能性を判定し、低ければ改善案まで提案。ChatGPTでも何往復もすればできることが、一発で回る
- アルバイトのシフト管理アプリ — Q&Aの合間には、GAS(Google Apps Script)のプログラムをAIに書かせてシフト管理アプリを作る例も追加で披露されました
アンドドットでも経費精算の勘定科目の仕分けや名刺データの管理をこうしたワークフローで自動化しているとのこと。「まだ取り組んでいる方は少ないかもしれないが、必ず次の段階として見えてくる部分。こういう世界があるんだ、というのをぜひ持ち帰ってほしい」と述べ、伴走型のセミナー研修や、好きなカリキュラムを選んで受講できる「AIスクール」の案内でセッションを締めくくりました。
質疑応答
Q. いろいろな利活用を考える際、AIはどれも有償バージョンが前提になりますか?
小森氏:今日紹介したものでは、Difyには無料枠がある(やり取りの文字数や回数に上限があり、超える場合は有料)。GASは無料で全部使える。まず実験するなら無料で始められます。
下之角:組織でガバナンスを効かせて、制限や管理をしながら使いたいなら有償が効果的だと補足しました。小森氏も「有償と無償の一番大きな違いはそこ。賢いモデルが使えるだけでなく、情報流出リスクの防止やログイン制御など、ガードレールに手が届くのが有料機能」と応じました。
Q.(下之角から小森氏へ)「AI活用の発想が大事」といっても、多くの人は発想が生まれない。そういうときは?
小森氏:実は、いきなり活用事例を収集するのはおすすめしない。AIで本当に効率化されるのは「かゆいところに手が届く」日常の小さな業務なので、良い事例はあまり世の中に公開されていない。事例ベースで考えると小さくまとまってしまう。AIの得意領域はカテゴリー分けすると7つ程度に集約されるので、そのカテゴリーを軸に「自分の業務でそういうシーンはないか」と業務起点で振り返るとアイデアが出てくる、という回答でした。
Q.(小森氏から下之角へ)社内の問い合わせ業務のAI化を始めたとき、社内的な抵抗はなかった?
下之角:やはりあった。カスタマーサービスは人が対応することで成り立っており、「仕事を奪われるのでは」という反応もあった。ただ、AIで対応できるのはあくまで限定的で、できることに限りがある。人とAIの役割分担を探していくことで、今はうまく回せている——と実体験を共有しました。小森氏も「全部自動化しようとするとうまく回らないケースが多い。現場の温度感を踏まえて人間とAIを住み分け、それをサービス化できているのが良い」と述べました。
まとめ
最終回となる第4回は、「成果を出した企業は何が違うのか」という実例(下之角)と、「個人が次のステップへ進むための具体的な道具」(小森氏)の2つの視点から、シリーズの集大成をお届けしました。
- 差はツールの優劣ではなく、運用の設計にある
- 会話ログは資産。生かせば経営の数字にも、次の事業の種にもなる
- 効果を「点」で終わらせず、「線・面」へ展開していく
- リテラシー→ツール選定→自作の3ステップで、現場が「作る側」に回る時代が始まっている
シリーズ完結と今後のご案内
全4回シリーズ「失敗しないAI活用」は今回で完結です。第1回(業務課題の整理)・第2回(導入期の指標)・第3回(運用と定着)のレポートもあわせてご覧ください。今後もGMO即レスAI、アンドドットの両社からさまざまなテーマのセミナーを企画・開催していく予定です。開催情報はセミナーご案内ページやメールで随時ご案内しますので、ぜひご期待ください。
お問い合わせ
本セミナーの内容について詳しく知りたい方は、各社までお気軽にお問い合わせください。
アンドドット株式会社(AI導入支援・研修)
コーポレートサイト:https://and-dot.co.jp/
お問い合わせ:https://and-dot.co.jp/contact
GMO即レスAI(AIチャットボット導入・運用)
サービスサイト:https://sokuresu.ai/
お問い合わせ:https://sokuresu.ai/contact
資料ダウンロード:https://sokuresu.ai/document/service