2026-06-03
【開催レポート】第3回:失敗しないAI活用〜AI導入後の運用と定着〜

2026年6月2日(火)、アンドドット株式会社、GMO即レスAI(GMOペパボ株式会社)の共催で、「失敗しないAI活用」シリーズ第3回セミナー「AI導入後の運用と定着」をオンライン(Zoom Webinar)で開催しました。
全4回シリーズの第3回となる今回は、「AIを入れたけど使われない」を乗り越えるための運用設計と組織定着がテーマです。アンドドットの小森一輝氏が「シャドーAI」のリスクと対策を、GMO即レスAIの下之角怜がGMOペパボでの2年間の実践事例を、それぞれの視点からお話ししました。本レポートでは、当日ご参加いただけなかった方に向けて、セッションの内容と質疑応答のポイントをご紹介します。
開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| セミナー名 | 第3回:失敗しないAI活用〜AI導入後の運用と定着〜 |
| 日時 | 2026年6月2日(火)16:30〜17:30 |
| 開催形式 | オンライン(Zoom Webinar) |
| 主催 | GMOペパボ株式会社 |
| 共催 | アンドドット株式会社、GMO即レスAI |
登壇者紹介

小森 一輝 氏
アンドドット株式会社 AIスペシャリスト / まほろば創研株式会社 代表取締役
2023年に日本マイクロソフトに入社し、Azureや生成AIの導入支援に従事。2024年よりアンドドット株式会社でAI導入・普及支援を担当し、2025年2月には「まほろば創研株式会社」を設立して代表取締役に就任。企業向けのAI活用支援を幅広く手がけている。

下之角 怜
GMOペパボ株式会社 事業開発部 即レスAIチーム ディレクター
鹿児島県出身。東京での12年間の生活を経てUターン。カスタマーサービス業界でお客様対応に従事した後、現在はGMO即レスAIのディレクターとして、AIチャットボットの導入・運用を推進している。
セッション1:生成AIの組織活用における「シャドーAI」の現状と対策
アンドドット株式会社 AIスペシャリストの小森一輝氏より、組織でAIを安全に活用するための土台づくりについてお話しいただきました。
AI活用人材は3つのステップで育つ
小森氏はまず、組織がAIを展開する流れを3つのステップに整理しました。
- AI基礎リテラシーの教育 — AIの仕組み、リスク、得意・不得意、活用場面を理解する段階
- AIツールの活用 — 業務やシーンに応じて適切なツールを選べるようになる段階
- AIアプリの内製 — 既存ツールでは届かない課題を、ノーコードなどで自ら作って解決する段階

今回のテーマである「シャドーAI」は、特にステップ1と導入し始めの段階で押さえておくべき論点です。
シャドーAIとは何か
シャドーAIとは、企業や職場が承認していない生成AIツールを、従業員が個人の判断で業務に使ってしまっている状態を指します。「影(シャドー)のAI」という言葉のとおり、管理側から見えないところでAIが使われている状況です。これは決して例外的な事象ではなく、すでに広く起きている問題だと小森氏は指摘します。
- 国内では生成AI利用者の34.8%がシャドーAIを利用している(SIGNATE総研/2025年12月)
- 国内で約5人に1人が未承認ツールを利用している(エルテス/2026年1月)
- 海外では57%が個人のAIアカウントを業務利用、33%が未承認ツールに機密情報を入力している(Gartner)
- 利用頻度も「ほぼ常時」「1日複数回」と、すでに日常業務に浸透している

なぜシャドーAIが起きるのか
小森氏は、シャドーAIには悪意ではなく合理的な理由があると説明しました。
- 業務効率化・生産性向上のため、質が高く速いツールを使いたい
- 新しい技術・モデルを試したいという好奇心
- 公式ツールの承認プロセスが遅く、現場のスピード感に追いつかない
- 何が許可・禁止なのかが曖昧で、判断基準がない

つまり、現場が「課題を解決したい」という前向きな行動の結果として生まれてしまうものだ、という整理です。
放置するとどうなるか
シャドーAIを放置すると、情報漏洩(機密情報・個人情報・ソースコードの流出)、AIによる学習や悪質サービスへのデータ蓄積といったリスクが顕在化します。小森氏はIBMの調査(2025年)をもとに次のようなデータも紹介しました。
- シャドーAIに起因する侵害は、平均で約67万ドル(約1億円)の追加コストにつながる
- 全侵害の20%がシャドーAIに起因している
- 漏洩時は個人情報の漏洩(65%)、知的財産の漏洩(40%)を伴いやすい
- 機密データのアップロードを技術的に防げている企業はわずか17%

技術的に完全に防ぐことは難しいため、「使われている前提」で可視化し、安全に使える状態へ変えていくことが重要だと強調されました。
安全に使うための3つの対策

1. AIリテラシーの底上げ
目的は「禁止を覚えさせること」ではなく「自分で正しく判断できる人を増やすこと」。セキュリティでいうゼロトラスト(何も信じない)の考え方と同様に、「個人で勝手に使っている前提」で判断基準を渡すことがポイントです。具体的には、入力情報がどこへ行きどう使われるかを知る「リスクの理解」、機密・個人情報の線引きをする「入力判断」、生成物を鵜呑みにせずハルシネーションや著作権を確認する「出力判断」、そして役割別の教育が挙げられました。
2. ガイドラインの設計
現場が迷わず安全に使えるための判断基準を与えるのがガイドラインの役割です。NG(禁止事項)ばかりを並べるのではなく、推奨される使い方やOK事例も書くこと、使ってよいツール・入力してはいけない情報・出力物の取り扱い・迷ったときの相談先・承認フロー・技術的な裏付けを盛り込むことが推奨されました。ゼロから作るのが難しい場合は、東京都デジタルサービス局が公開しているガイドラインのサンプルを参考に、自社向けにカスタマイズするとよいとのことです。

3. 社内浸透の仕組み化
「なぜそのツールを選んでいるのか」を説明できる状態にすること、利用開始のフローをスムーズにすること、成功事例を横展開すること、アンバサダーや推進担当に気軽に相談できる体制をつくることが挙げられました。
小森氏は「抑え込みではなく、安全に使える環境づくりが重要」とまとめ、アンドドットが提供するAI研修・導入支援についても紹介しました。
セッション2:AI導入後の運用と定着 〜GMOペパボの実践〜
GMO即レスAIの下之角怜より、GMOペパボがAIを導入してから約2年、現場で何が起き、どう運用を回してきたのかを実践例とともにお話ししました。
組織のAI活用度は「帯の色」がバラバラ
下之角は趣味の空手になぞらえ、「組織のAI活用度は、白帯から黒帯まで人によって様々」と切り出しました。GMOペパボでも導入時点では推進リーダーの間でも習熟度がバラバラだったといいます。

3つの層に、それぞれ別のアプローチを
AIを活用できる組織として「自走」するには、3つの層に別々のアプローチが必要だと整理されました。
- 現場層:オーナーシップ — 部署ごとにAI活用の担当者を立て、改善・起案できる動線をつくる
- 管理者層:会議・マネジメントを手放す勇気 — 全体会議と共有を続けると、現場に任せる責任感が生まれない
- 経営層:定期報告 — 月次1ページで判断できる材料だけでも共有し続ける

このうちどれか1つでも欠けたり、どこかに依存したりすると、定着から遠のくと述べました。GMOペパボでは各部署にAIリーダーを置き、Slackで気軽に事例を共有する場を常設。さらに部署をまたいでリーダーが集まる時間を週1回続けています。
導入後に現れた「3つの壁」
導入直後は順調でも、その先に壁が現れます。下之角はGMOペパボがぶつかった3つの壁と、その乗り越え方を共有しました。

壁1:利用率の頭打ち
立ち上げ期はもの珍しさで利用率が伸びても、一定期間で頭打ちになりがちです。GMOペパボではAIの利用ログを分析し、「使われていない/ニーズはあるのにAIが回答できなかった」やり取りを新しいユースケースとして追加し続けました。その結果、今では一部のバックオフィス業務の受け答えや出張手配までAIで完結するのが当たり前になっています。前提として、業務の整理と課題の確認(泥臭い作業)が欠かせないと強調しました。
壁2:ナレッジの陳腐化
AIの精度は導入しただけでは上がらず、放置すると下がることもあります。機能改善やサービス変更にナレッジの更新が追いつかないと、AIが古い情報を答え続けてしまいます。GMOペパボでは、新機能のリリースや仕様変更の際に必ずAIへ情報を反映する仕組みを整備。ハルシネーション対策として「情報がない場合は回答しない」設定も行っています。また、チューニング作業を新人オペレーターのオンボーディングに組み込み、属人化の防止とサービス理解の促進を兼ねるという応用も紹介しました。
壁3:効果が事業・経営に届かない
現場では数字が出ているのに、経営層には「結局何が良くなったのか」が伝わらない——これが最も厄介な壁です。この状態が続くと追加投資が通らず、運用が人手に戻ってしまいます。GMOペパボでは、AI活用で削減できた時間を人件費や営業利益に「翻訳」し、経常報告に組み込みました。この数値はGMOペパボの決算資料にも反映されています。
「定着」とは自走できている状態
下之角は、AIが定着している状態を「自走できている状態」とシンプルに定義しました。全社的な普及プロジェクトが終わっても、各担当者が自分のサービスのチューニングを続けられ、リーダーがいなくなっても改善が止まらない仕組みが生まれていること——それが定着の証拠だといいます。

GMOペパボでは2023年末、ChatGPTが話題を呼んだ頃にAIの全社一斉導入プロジェクトを開始。15部署が並列で動き、最も結果が出たカスタマーサービス部門を皮切りに、約4週間で全社展開を完了しました。重要なのはその後で、KPIとゴールを達成した段階で導入プロジェクト自体を解散。現在は各部署の担当者が自走でチューニングを続けています。


導入期は「プロジェクトモード」でスピード重視・全社並列・進行管理表で見える化し、安定稼働して改善が日常業務に組み込まれたタイミングでプロジェクトを終わらせる、という運用の切り替えが紹介されました。
GMOグループ全体の取り組み
GMOペパボが属するGMOインターネットグループ全体でも、AIを活用する人を評価する仕組みや、AIを試したい社員を後押しする支援制度があり、全従業員がAIに触れられる環境が整っています。月に一度、ほぼ全ての業務をAIのみで完遂する「GMO AIデー」という取り組みも紹介されました。

質疑応答
参加者からは多くの質問が寄せられました。主なやり取りをご紹介します。
Q. 運用定着フェーズで、技術課題・組織課題・利用者課題のうち最もボトルネックになりやすいのは?
小森氏:会社によって異なるが、「普及・導入率は上がるのに活用率が上がらない」ケースが最も多い。対策として、アイデアワークショップやハッカソン、良いプロンプトを競うコンペが有効。組織文化的に難しければ、朝会の5分で「最近こんな使い方が効果的だった」と1つ共有するところから始めるとよい。
Q. 経営層が必要性を実感できていない場合、どんなアプローチが有効か?
小森氏:判断軸はまずROI(投資対効果)。社内AIツールの利用回数や採択率などのメトリクスで生産性を可視化すると分かりやすい。組織が大きいと経営層から現場が見えにくくなるため、データで示すことが重要。そして「経営層こそ自分で触るべき」——使ってよいと感じたものを人に勧めるほうが本質的だと述べました。
下之角:営業の現場では、「競合がすでに導入している」ことによる機会損失リスクに注目する経営者も多い。定量的な指標と定性的な観点の両方が効くと補足しました。
Q. 利用率はどのレベルで判定しているのか?
小森氏:議事録作成回数やチャット回数は分かりやすい指標。開発文脈ではGitHub Copilotの提案採択率、Difyなどで内製したツールの呼び出し回数なども計測できる。
下之角:GMOペパボのカスタマーサービスでは、問い合わせが必ずAIを通る設計にし、AIで解決できたか・有人につながったかを集計して正答率を測定。1サービスでは一次対応で約6割の問い合わせが完結しており、その数字だけでも活用の説得力があったと共有しました。
まとめ
第3回は、「シャドーAI対策」という守りの視点(小森氏)と、「導入後の運用と定着」という攻めの視点(下之角)から、AIを単なるツールで終わらせず組織に根付かせるための具体策をお伝えしました。
- リテラシー・ガイドライン・浸透の仕組みで、安全に使える環境をつくる
- 現場・管理者・経営層の3層それぞれにアプローチする
- 利用率・ナレッジ・経営への可視化という3つの壁を、ログ分析・更新の仕組み化・成果の翻訳で乗り越える
- リーダーがいなくなっても改善が止まらない「自走できている状態」を目指す
次回のご案内
シリーズの最終回となる第4回は、2026年7月9日(木)17:00〜の開催を予定しています。これまでの学びを総まとめする内容になりますので、ぜひご参加ください。詳細は追ってセミナーご案内ページにてご案内予定ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
お問い合わせ
本セミナーの内容について詳しく知りたい方は、各社までお気軽にお問い合わせください。
アンドドット株式会社(AI導入支援・研修)
コーポレートサイト:https://and-dot.co.jp/
お問い合わせ:https://and-dot.co.jp/contact
GMO即レスAI(AIチャットボット導入・運用)
サービスサイト:https://sokuresu.ai/
お問い合わせ:https://sokuresu.ai/contact
資料ダウンロード:https://sokuresu.ai/document/service