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クレーマー対応はどこで線を引く?打ち切りの基準と記録の残し方

2026-09-09

クレーマー対応はどこで線を引く?打ち切りの基準と記録の残し方

「何度説明しても納得してもらえない」「同じ相手から週に何度も電話がかかってくる」。クレーマー対応で消耗している現場、オペレーターは少なくありません。結論からお伝えすると、対応の成否を分けるのは話し方ではなく、どこで線を引くかを先に決めてあるかどうかです。

線引きが決まっていない職場では、担当者が一人で「これはもう断ってよいのか」を判断することになります。判断がぶれれば同じ相手に違う答えを返すことになり、対応はさらに長引きます。

2026年10月1日からは、悪質なケースへの対処方針をあらかじめ定めることが事業主の義務になります。本記事では正当なクレームとの線引き、対応を打ち切るまでの手順、電話やメールでの記録の残し方を整理します。「もう対応しません」と言うための根拠づくりまで、厚生労働省の資料に沿って追います。

▶ 関連記事:クレーム対応のコツは?つらい心理負担を減らす聞き方と手順

1. クレーマー対応は「線引き」から始まる|クレームとの違いを分ける2つの軸

クレーマー対応の出発点は、目の前の要求が正当なクレームなのかを見分けることです。厚生労働省は判断の尺度として、次の2つの観点を挙げています。

軸①:要求の内容に妥当性はあるか

まず事実関係と因果関係を確認し、自社に過失があるか、根拠のある要求がなされているかを見ます。

たとえば購入した商品に瑕疵(かし。品質上の欠陥)があり、交換や返金を求められているなら、その要求には妥当性があります。一方、商品に問題がなく説明にも不足がないのに返金を求められているなら、要求に正当な理由はないと考えられます。

軸②:要求を実現する手段・態様が相当な範囲か

内容に妥当性があっても、実現を求める手段が行き過ぎていればカスタマーハラスメントに該当し得ます。厚生労働省は社会通念上許容される範囲を超えた言動を、内容と手段の2つに分けて例示しています。

区分社会通念上許容される範囲を超えるとされる例
言動の内容そもそも要求に理由がない/商品・サービスと関係のない要求/契約等で想定するサービスを著しく超える要求/対応が著しく困難または不可能な要求/不当な損害賠償要求
手段や態様身体的な攻撃/精神的な攻撃(脅迫・中傷・名誉毀損・侮辱・暴言・土下座の強要等)/威圧的な言動/継続的、執拗な言動/拘束的な言動(不退去・居座り・監禁)

(出典:令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!|厚生労働省

クレームとカスハラを分ける2つの関門(要求の内容の妥当性・手段の相当性)を通るフロー図

この2つは、どちらか一方だけで決まるものではありません。要求の内容が著しく妥当性を欠く場合は、手段がどのようなものであっても不相当とされる可能性が高くなります。逆に内容が妥当であっても、暴言や長時間の拘束をともなえば該当し得ます。

一方で、妥当性を欠く要求であっても、断ったところですぐ引き下がったのであれば、就業環境が害されたとは言えず該当しない場合もあります。線を引くのは「一度でも無理な要求をしてきたか」ではなく、「その言動で就業環境が害されたか」です。

「悪質クレーム」「モンスタークレーマー」と呼ぶときも、線を引く対象は相手の人格ではなく言動です。そう整理すれば、現場の判断はぶれにくくなります。

なお対面に限らず、電話やメール、SNSなどインターネット上で行われるものも対象に含まれます。対面の窓口を持たない企業も無関係ではありません。義務化と対策の全体像は【2026年義務化】カスハラ対策の完全ガイド|コールセンターを守るAI活用法で整理しています。

2. 悪質クレーマーへの対応で決め手になるのは「打ち切りの基準」

線引きができても、いつ対応を終えるかが決まっていなければ現場は止まれません。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」は、行為の型ごとに対応例を示しています。

頻度と時間を、事案が起きる前に決めておく

長時間の電話や居座りが続く「時間拘束型」では、まず対応できない理由を説明し、応じられないことを明確に告げます。そのうえで話が平行線のまま一定時間を超えれば、対面ならお引き取りを願い、電話なら切るとされています。複数回かかってくる場合は、あらかじめ対応できる時間を伝え、それ以上に長い対応はしません。

繰り返し連絡が来る「リピート型」への対応例は、さらに踏み込んでいます。

連絡先を取得し、繰り返し不合理な問い合わせがくれば注意し、次回は対応できない旨を伝える。それでも繰り返し連絡が来る場合、リスト化して通話内容を記録し、窓口を一本化して、今後同様の問い合わせを止めることを伝えて毅然と対応する

(出典:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル|厚生労働省

打ち切りはその場の判断ではなく、段階を踏んだ手続きだということです。注意する、次回は対応できないと伝える、記録して窓口を一本化する。この順序を先に決めておけば、担当者がゼロから判断する必要はありません。

対応の打ち切りが進む3段階(注意する→予告する→記録して窓口を一本化する)

3段階のうち、現場がいちばん言い出しにくいのが2つめの予告です。ここは断ると伝えるより、回答が変わらないと伝えるほうが切り出しやすくなります。「これまでにご説明した内容が当社の回答のすべてです。同じご要望については、次にご連絡をいただいても回答は変わりません」という形です。その場の振る舞い方や具体的な言い回しは、カスハラ対応はどうすればいい?現場を守る初動フローと言い回し例で扱っています。

現場が迷うのは、前回の対応が見えないとき

同マニュアルは、対策に取り組む企業でも起きた失敗として次を挙げています。

  • 別の班では引き継ぎがうまくいかず、適切に対応できなかった
  • 過去に要求を受け入れた事案があり、思うように処理ができなかった
  • 一度解決したと思われた事案を掘り返され、振りだしに戻った

いずれも担当者の力量ではなく、前回どう対応したかが引き継がれていないことが原因です。マニュアルも、十分な説明をしているにもかかわらず問い合わせが長引く場合は、どの程度(時間や頻度等)まで対応するかをあらかじめ決めておくことを挙げています。

GMOペパボでCS(カスタマーサポート・サクセス)を経験してきたメンバーにも、こんな経験があります。毎日決まった時間にこちらから電話をかけるよう求められ、2週間続けました。用件はお客様に用意いただく書類がそろったかの確認で、そろわなければ後続の手続きに進めません。ところがつながらない日も多く、つながっても準備は進んでいませんでした。高圧的な反応に消耗するだけで、お客様にとっても進まない確認を毎日受けるだけの時間です。振り返れば、頻度を決めないまま過剰にサポートを提供していた現場でした。

管理者が不在になる小規模な拠点でも、判断の余地を減らした短い基準があれば現場は動けます。マニュアルも、引き継ぐ管理者がその場にいない場合は、現場の従業員のみでも適切な対応ができるよう基本的な対応方法を周知しておく必要があるとしています。

3. 電話・メールでのクレーマー対応|窓口の一本化と記録の残し方

電話やメールでは、相手の表情も周囲の様子も見えません。そのぶん記録の設計が、そのまま対応力になります。

電話:できることとできないことを先に切り分ける

厚生労働省のマニュアルは、電話でのクレーム対応の留意点として次を挙げています。

  • 専用電話を設置して録音ができるようにしておく
  • 第一受信者が責任を持ち、問い合わせ案件のたらい回しをしない
  • 対応できることとできないことをはっきりさせ、相手に過大な期待を抱かせない
  • 即時回答できない内容は、事実を確認してから追って返事をする

「できないことをはっきりさせる」は、その場の勇気ではなく事前の準備で決まります。何を断るかを組織が決めていなければ、担当者は断れません。

メール:記録は残るが、回数は決めておく

メールなら、やり取りはそのまま文字で残ります。電話のように記録を起こし直す必要はありません。ただし返信の速さや回数を決めておかないと、電話と同じように際限なく続きます。

引き継ぎで振り出しに戻さない記録の項目

同じ相手から繰り返し連絡が来る場合、窓口の一本化が効きます。担当者が変わるたびに説明をやり直す状態は、相手から見れば交渉の余地に映ります。本社・本部へ引き継ぐ際に共有する内容として、マニュアルは次の6つを挙げています。

  • 対応日時、場所:長時間の拘束は、時間そのものが業務を妨げられた事実の材料になります
  • 対応従業員:誰が受けたか。特定の担当者に負担が集中していないかも見えます
  • 要望の内容:相手が何を求めているか。軸①の妥当性を判断する材料です
  • 要望者の情報:連絡先。繰り返しを把握し、窓口を一本化するために要ります
  • 管理者の指示:現場が独断で決めたのではないことの裏づけになります
  • 対応結果:どこまで回答したか。次の担当者はここから話を始められます

記録が受ける・残す・引き継ぐの3段階でつながる流れと、残す6項目

記録が薄いと、次に連絡が来たとき担当者は前回の回答を追えず、一から聞き直すことになります。同マニュアルは、直接のやりとりだけで1時間以上かかる事案があり、社内での方針検討や弁護士・警察への相談時間を含めると相当な時間コストになると指摘しています。仮に1件あたり直接対応で1時間、聞き直しと社内報告に30分かかるとすれば、月10件で15時間です(概算)。

▶ クレーマー対応の基準づくり・記録の仕組み化についてのお問い合わせはこちら

4. 「もう対応しません」と言える根拠はどこに置くか

打ち切りを決めても、根拠が社内のメモだけでは弱いままです。ここには社内のハラスメント対応とは違う事情があります。

顧客とは雇用関係がないため、社内の判断だけでは止められない

社内のハラスメントなら、行為者に指導や懲戒といった措置を取れます。顧客には同じ手が使えません。会社と顧客等との間に雇用関係がないため、出入り禁止や行為の差し止めには利用規約(定型約款)や裁判が必要なケースもあると、マニュアルは説明しています。

定型約款とは、不特定多数を相手にする取引のためにあらかじめ用意された契約条項のことで、多くの企業の利用規約がこれにあたります。ただし規約に書くだけでは足りません。契約の内容とすることを相手に示し、組み入れてはじめて根拠になります。

何を、どこに書いておくか

つまり「もう対応しません」といった、カスタマーサポートの提供停止には根拠が要ります。あらかじめ利用規約やサポートの案内に、どのような言動があれば対応をお断りするかを示しておく必要があります。

書いておく内容は、大きく2つに分かれます。

  • 対象となる行為:暴力・暴言、過剰または不合理な要求、SNSやインターネット上での誹謗中傷など、どの言動を対象とするかを類型で示す
  • 該当した場合の対応:サービスの提供やサポートの対応をお断りする場合があること、悪質と判断した場合は警察や弁護士に相談すること

当グループもカスタマーハラスメントに対する考え方を公表しています。該当するかどうかは「要求内容に妥当性があるか」「手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か」の2点から判断すると明記しています。本記事で見てきた2軸と同じ枠組みです。

先に示しておく利点は2つあります。1つは、担当者が自分の判断で断るのではなく、会社の方針を伝える立場になることです。もう1つは、義務化が求める「特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定める」という措置が、文書として形になることです。

基準を機械的に当てない

厚生労働省は対策を講じる際の留意点として、消費者の権利と、障害者差別解消法における障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供義務を挙げています。

説明の理解に時間がかかる、電話でのやり取り自体が難しいといった事情は、しつこさとは別の問題です。回数や時間の基準だけを当てはめると、配慮が必要な相手を弾いてしまいます。基準と併せて、事情を確認する一段を挟んでください。法的措置に進む場合の証拠の残し方は、【義務化対応】カスハラは訴えられる?証拠の残し方と判断基準の作り方で解説しています。

5. 線引きの運用と記録を支える「GMO即レスAI for CS」

基準を決めても、記録が残らなければ運用は続きません。GMO即レスAIは、AIチャットボットの導入効果を最大化する導入支援サービスです。CS業務に特化した「GMO即レスAI for CS」なら、一次対応から記録の蓄積までを一つの流れにできます。

AIが一次対応を受け持つと、やり取りはそのままログとして残ります。担当者があとから思い出して書く必要がなく、時系列も自動でそろいます。人の対応が必要になった場面では、会話の文脈を保ったまま有人チャットへ切り替わり、そのままチケットとして一元管理できます。窓口の一本化と記録の一本化を、同じ場所で満たせる形です。

問い合わせの総量が下がれば、手ごわい相手に向き合う余力も生まれます。カラーミーショップでは、AIチャットボットの導入で月間803時間の問い合わせ対応時間を削減しました。GMOペパボが778万人以上の顧客対応で培ったCS運営の知見が土台にあります。

一方で、来店客の居座りや身体的な行為への備えは、AIだけでは完結しません。そこは警備や防犯カメラとの連携が中心になります。向いているのは、電話・メール・Webでの問い合わせが多く、同じ相手への対応履歴が担当者ごとにばらついている企業です。

6. クレーマー対応のよくある質問(FAQ)

Q. 対応を打ち切ると、法的に問題になりませんか?
A. 自社に過失がなく、要求の手段が社会通念上不相当であれば、要求に応じない判断は取れます。ただし出入り禁止のような強い措置は、利用規約や裁判が必要になるケースもあるため弁護士に確認してください。

Q. モンスタークレーマーと悪質クレーマーは違うものですか?
A. どちらも通称で、法令上の定義はありません。企業として扱うときは呼び名ではなく、要求内容の妥当性と手段・態様の相当性という2軸で判断します。

Q. 規約に書いていない言動だった場合はどうなりますか?
A. 類型はあくまで例示で、限定列挙ではありません。当グループの考え方も「これらに限るものではありません」としています。書いていない言動でも、2軸に照らして判断します。

Q. 録音することは相手に伝えるべきですか?
A. 厚生労働省のマニュアルは、現場での対応について必要があれば相手の了解を得て録音するとしています。電話については、専用電話を設置して録音ができるようにしておく方法を挙げています。

Q. 担当者個人の判断で対応を断ってもよいのでしょうか?
A. 個人に判断を委ねない設計が前提です。どの言動が出たら上長に引き継ぎ、どの段階で本部に上げるかを組織が決めておけば、担当者は方針を伝える役割に徹することができます。

7. クレーマー対応の基準づくりにお悩みではありませんか?

「打ち切っていいかどうかを、現場が毎回悩んでいる」「同じ相手への対応履歴が担当者ごとにばらばらで、前回の回答を追えない」。2026年10月の施行を前に、そうした課題を抱える担当者は少なくありません。

GMO即レスAIでは、問い合わせ対応の設計から記録が残る運用の立ち上げまで、CS出身のメンバーが伴走します。何から手をつけるかを整理する段階からご相談ください。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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